「かわいいだけじゃ食えない」――モデル業界で古くから言われる言葉だ。では、実際いくらなら食えるのか。この問いに数字で答える記事は、驚くほど少ない。ギャラの話は、この業界最大のタブーだからだ。
事務所は取り分を知られたくない。モデル本人は「安く働いている」と思われたくない。発注側は相場が上がると困る。全員が黙る。その結果、損をするのはいつも、相場を知らない新人だ。
本誌は黙っても得をしないので、全部書く。
まず、相場を全部書く

募集要項や業界内で語られる数字をまとめると、フォトモデルの報酬はだいたい次のレンジに収まる。
- 撮影会モデル:時給2,000〜5,000円が中心。指名が増えれば歩合で跳ねる
- EC・物撮り(アパレル):半日1〜3万円。顔出しなしの「首から下」案件も多い
- 広告・カタログ:日給3〜10万円以上。使用範囲と期間で大きく変わる
- 読者モデル・サロンモデル:交通費+α、ときに無償。「実績作り」と割り切る世界
- パーツモデル(手・足・髪):拘束1時間で1万円を超えることも。ただし狭き門
断っておくが、これは保証ではなく相場だ。ただ、ここから大きく外れた条件を提示されたら、その理由を聞く権利があなたにはある。聞いて嫌な顔をされたら、それが答えだ。
事務所の取り分は30〜50%。高いのか、安いのか

事務所に所属すると、ギャラの30〜50%が手数料として引かれるのが一般的だ。この数字だけ見て「中抜きだ」と怒る人がいるが、話はそう単純ではない。
営業をかけ、単価を交渉し、トラブルの矢面に立ち、スケジュールを管理する。それをやってくれるなら、50%は投資として成立する。逆に、仕事を持ってこない事務所の30%は、ただの場所代である。
見分ける質問はひとつでいい。「先月、事務所経由で決まった仕事は何件ですか」。具体的な数字で答えられない事務所に、あなたの半分を渡す理由はない。
フォロワー数が履歴書になった

ここ数年で、キャスティングの現場は静かに変わった。宣材写真より先に、InstagramのURLを聞かれる。案件の条件に「フォロワー1万人以上」と書かれる。写真映えではなく拡散力で選ばれる時代が、もう来ている。
当然、歪みも生まれた。フォロワーを買うモデルが現れ、それを見抜くために発注側はエンゲージメント率を見るようになり、いたちごっこが続いている。買ったフォロワーは案件を一度も運んでこない。数字は盛れても、財布は盛れない。
一方で、フォロワー数千人の「マイクロインフルエンサー」に少額案件を大量に撒く手法も定着した。つまり、巨大アカウントでなくても稼ぎ口はある。SNSはもはや宣伝ツールではなく、ギャラ交渉の材料そのものだ。
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「副業モデル」という現実解

平日は会社員、土日は撮影会。この働き方は、もう珍しくない。月に数万円の副収入なら、フォトモデルは現実的な選択肢だ。
ただし税金の話は避けて通れない。給与以外の所得が年20万円を超えれば、原則として確定申告が必要になる。現金手渡しでも収入は収入だ。細かい条件は人によって違うので、迷ったら税務署か税理士に聞くのが最短ルートである。「バレなければいい」は、バレたときに一番高くつく。
ギャラ交渉で使える3つの質問

- 「写真の使用範囲と期間はどこまでですか」――二次利用は別料金が原則
- 「拘束時間と、延長時の料金規定はありますか」――「押し」は無料ではない
- 「支払いはいつですか」――翌々月末払いも珍しくない。先に知っておく
この3つを撮影前に文面で確認するだけで、トラブルの大半は起きる前に消える。まともな相手ほど、こういう質問を歓迎する。
よくある質問
未経験の初仕事、いくらからが普通?
無償〜数千円というのが現実だ。ただし相手が商用利用するなら、未経験でも報酬を求めていい。「経験になるから」は発注側の台詞であって、あなたの値札ではない。
ギャラが未払いになったら?
まず、約束を証明できる文面(メール・DMの履歴)を揃えて請求する。それでも払われなければ、少額訴訟という制度がある。泣き寝入りの前に、消費生活センターや法テラスに相談してほしい。
男性フォトモデルの相場は?
案件数は女性より少ないが、単価の構造はほぼ同じ。EC・広告分野ではむしろ競争が緩く、副業として成立させている人は着実にいる。
お金の話をするモデルは、この業界ではまだ「はしたない」と言われる。だが、値段を口にできない仕事は、いつまでも買い叩かれる。あなたのギャラは、あなたが決めていい。その交渉の根拠として、この記事の数字を遠慮なく使ってほしい。
